ちゃちゃさんの作品

約束の地 〜クラウド編〜
     (JAMクラウド企画参加作品『丘の上にて』)




あいかわらず、ここは殺風景だなあ。


ゴンガガにもあんたの墓はあるらしいけど、
でもやっぱり、会いにくるならここだと思って…。

あんたと、最後に別れた場所だから。
…あんたがオレに、「生きろ」といってくれた場所だから。





ずっと長い間、あんたのことを忘れていて、ごめん。

いまでも一番大事な友だちだと思ってるのに…。

あんたがオレを救ってくれたこと。

そして何より

「トモダチ」

その言葉の意味を教えてくれたこと。

忘れることなんてできやしないはずなのに…。

大好きだったよ ザックス ほんとうに。


あんたが死んだって、信じたくなかったのかもしれないな、オレ。




あんたがくれたソードは、ここに返していくよ。
十字架の墓標なんて、あんたには似合わないし。


そうだ

花をそなえていいかい?

花なんて、あんたは笑うかもしれないけど。

あんたと同じくらい、オレが大好きだった女の子が
大事に育てていた花壇の花なんだ。

戦いの後にも ちゃんと花が咲いててさ。

心配なことがあるときとか
ちょっとおちこんじまったときとか

この花を見ると こころがあったかくなるんだ。

オレは彼女を守ってやれなかったんだけど

彼女はいまでもどこかでオレを守ってくれてる気がする。

あ、それはあんたも、かな? ザックス。


だから、この花をここに供えていくよ。





………。

……ごめん。

涙なんか、あんたは嫌いだよな…。



ほんというと

どんなことしてでも、あんたに生きててほしかった。

どうしてオレは あの時なんにもできなかったんだろう。

どうしてみすみす あんたを死なせたりしたんだろう。


…それを思うと いまも眠れない。

くやしくて 悲しくて

たまらないんだ…

自分が憎くなる


でも

あんたはもう ここにはいない。

どんなに後悔しても あんたは帰ってこない。



……だったらオレはあんたの分も生きなきゃ な。



がんばるよ、オレ。

オレのことだから、きっと目立たないやつのままだろうけど

オレにしか生きられないオレの人生を

胸をはって生きていこうと思う。


それしか

あんたにむくいる方法はないから。


挫けそうになった時には
この丘から見える風景を思い出すよ。

ザックス。

あんたを思い出すよ。



そして、いつかは言えるようになってみせる。


ここが、
いまオレの足が立っているこの地こそが

オレ自身の『約束の地』だ、と。

……いつか きっと。





fin