ちゃちゃさんの作品

約束の地 〜ジェシー編〜


    1 


 この前 空を見たのはいつだったろう。
 もう数ヶ月、このミッドガルのスラムから出ていないものね・・・。

 私の生まれた村では、いつも花が咲いていたって、死んだ母さんは言っていたけど。
 ・・・その村は、もうない。
 15年前の戦争で、神羅の侵攻ルートにあたっていたから。
 ・・・戦争の相手は村の向こうの大きな軍事都市だったって話だけど、
 村は完全に焼かれてしまった。

 だから、私の故郷はこの薄暗い街しかない。
 神羅の作ったこの街を、私が故郷と呼ぶのは、皮肉なことなんだろうけど・・・。

 「おい、ジェシー!! 例のヤツはできてんのかよ!!」

 「わ、わっ! び、びっくりしたー。バレットかあー。おどかさないでよ。
 例のやつなら、バッチリよー!このセクシーダイナマイト・ジェシーちゃんに、
 お・ま・か・せ」

 「ボケっとしてる暇はねーぞ! おまえが目ぇ開けたままで寝てるヒマにも、
  この星は どんどん弱っていくんだぜ?!」

 「はいはい、わかってるってばあ」

 ・・・口が悪すぎるのがバレットの困ったところよね。
 でも私はこの「アバランチのリーダー」が好き。
 あ、もちろんそういう「スキ」じゃないわよ。 おぢさん趣味はないもん。 



 私は「アバランチ」1のハイテク技術者、ジェシー。
 「アバランチ」っていうのは神羅グループに対する抵抗組織。
 はじめは集会とか、抗議デモとかが中心の活動だったんだけど・・・。
 そういうのも、神羅の弾圧でできなくなって・・・。
 今は少数で地下に潜って、実力行使中心の活動をしてる・・・。

 ・・なんて言っても、そうね、ホントのところ、私たちはいわゆる「テロリスト」。
 それが現実なのかもしれない。

 でもバレットの、星を守ろうとする考えは、やっぱり正しい。
 私たちは私怨だけで行動しているわけじゃない・・・そう思うから協力しているの。
 それにもう、ここ以外、私の帰るところはないし。

 あ、そうだ、爆薬の量、もう一度チェックしておこう。
 それにしても・・・。
 私以外にこういうものを作れる仲間がいないっていうのも、問題よね!
 なんでIDカードの偽造から爆弾まで、みんな私がつくってるのよ、もう。
 ・・・あ、ばれちゃった?
 ・・・アバランチ1のハイテク技術者っていっても、技術者はわたしだけなの・・・。

 
 今、私のいるところはミッドガル7番スラムの酒場、「セブンスヘブン」。
 でも地下には「アバランチ」のアジトがある。

 「んごぉ〜〜。んごぉ〜〜」

 爆薬のチェックをするために、アジトに下りていったら、
 ウェッジがいびきかいて寝てた。・・・いい子なんだけど・・・
 はっきりいって役立たず。
 でもこの子もほかに行くところ、ないのよね。
 バレットも、それをしってるから、役に立たないのわかっていても仲間にしている。
 そんなバレットだから、私は好き。

 しばらく作業していたら、上からコールがはいった。
 バレットが呼んでるみたい。いかなきゃ。

 地下のアジトから上のバーに行くときは、
 カモフラージュしてあるエレベーターをつかうことにしてあるの。
 でもこれ、ちょっと最近調子悪いかも・・・
 そんなことを気にしながら上がっていったら・・・。

 そこに、彼がいた。

 ・・・目があったとき、私、「電撃的に恋に落ちる」ってほんとにあるんだって、
 初めて知った。
 微妙に光を反射する、彼のブルーの瞳に、すいこまれそうになって・・・。
 でもなんとなく、その瞳には深いかげりのようなものがあって。

 ほんとに胸が痛くなったの・・・。

 そんなときティファが満面の微笑みをうかべていった・・・。

 「ジェシー。紹介するわね! こちら 私の幼なじみ。 今度のミッションに、
 参加し てくれるって!!」

 「まだきめてない」

 声もとってもすてき。でも・・・

 「いいじゃないの。ほかに行くところ、ないんでしょ?」

 でも・・・ティファのおさななじみか・・・。
 それって、ボーイフレンドってこと?
 ・・・一瞬の恋だったわね。
 ティファが相手じゃあ、わたしなんか逆立ちしたって勝ち目ないし・・・
 でもいいか、おもいつづけていたって・・・いいよね?
 心は自由なはずだもん・・・。

 「ティファ。こいつ、ほんとうにおまえのしりあいなのかよ?」

 「そうよ。それに、人手がたりないって言ってたのはバレットじゃないの」

 「・・・そりゃあそうだが・・・」
 
 ティファとバレットはまだしばらくいいあってたけど、
 結局は彼にも参加してもらう方向で話がまとまった。
 なにせ、ここまでの活動で仲間はほとんど失ってしまったのだから・・・。
 昔はもっとたくさんの仲間達と、夜毎に平和と星の繁栄を語り合ったんだけど。
 強大な軍事力の前には、イデオロギーだけでは戦えないと知って、
 私たちは過激な運動を選択した。

 その時点で去っていった仲間も少なくない。

 『テロリストは所詮テロしかできない』

 それは正しい非難だと思う。 たしかに。
 でも他になにを選択すればよかったのだろう・・・。
 
 とにかく、私たちは明日
 一番魔晄炉を、爆破する。


     2


 魔晄炉はいやに黒々と、大きく見えた。 いつにもまして禍々しく・・・。
 どうして「禍々しい」と、感じるのか、私にはわからない。
 もちろん、バレットがいう
 「星の命を吸い上げている」から、にはちがいないのだろうけど、
 なんだか・・・それだけでなく、
 人の中のなにかとても大事なものをけずっていってしまう・・・
 そんな気がする・・・いつ見ても。

 入り口にたどり着く前に、すでに神羅の兵隊と戦闘になった。
 でも楽勝!!
 だって、新入りの彼の強いことといったら・・・。
 ますます好きになっちゃいそう・・・。

 「さすが、ソルジャー! でもよ。反神羅グループ、【アバランチ】に、
 ソルジャーが参加するなんて、すげぇよな!!」

 ビッグスが言った。・・・そうなんだよね。
 バレットが「あれは神羅のソルジャーだから、信用はするな」って・・・。
 そういってたんだ・・・彼がでていった後・・・。でもなんだか信じられない。

 「その話って本当だったの? ソルジャーっていったら私たちの敵でしょ?
 どうしてそのソルジャーが私たちアバランチに協力するわけ?」

 ・・・なんでこんな言い方になっちゃうんだろう?
 これじゃほんとに彼のこと、疑ってるみたいに聞こえちゃうじゃない・・・。
 馬鹿じゃないの、私。
 でも・・・たぶん、もうかなり好きだから・・・裏切られるのが怖いんだろうな、私。

 「早とちりするな、ジェシー。元ソルジャーなんだってさ。
 今はもう神羅をやめちまって俺達の仲間ってわけさ。まだ名前聞いてなかったな。
 教えてくれ」

 「・・・クラウドだ」

 「クラウドか、おれは・・・」

 「あんたたちの名前なんて興味ないね。 どうせこの仕事が終わったらお別れだ」

 ・・・言われたビッグスも面食らったろうけど、私もちょっとショック。
 なんでそんなに、かたくななの?
 悲しいけど・・・なんだかそういう彼の方がさみしそうにみえたりも、する。
 それって私の思いこみ?
 いけない。集中しなくちゃ・・・。大変なことをしようとしているんだから。

 「私とビッグスがここのドアロックの暗号を手に入れたの」

 「ここの暗号を入手するために何人の仲間が犠牲になったことか・・・」

 そうだった・・・。だからせめてこのミッションは成功させないといけない。

 最深部へは、クラウドとバレットだけが行くことになった。
 でもなるべく近くまでいってサポートしてあげたくて、私は途中までついていった。

 「この下よ」

 「わかった」

 彼らが下りていった後、すぐ元のところへ引き返すつもりだったんだけど、
 心配だったから、結局そこで待っていたの。
 馬鹿よね。
 私なんかが待っていてもあんまり意味ないじゃないの。

 だいぶ時間がたって、少し不安に思い始めた頃、いきなり大きな揺れがあった。
 後から聞いたら、それはクラウドたちが神羅の大型兵器を破壊したせいだったらしい。
 ところが・・・
 間の抜けたことに、そのとき私の立っていた鉄骨が一部分くずれて下におちちゃって、
 あいた穴に片足を挟んでしまったの。
 無理に引き抜こうとしたらすごく痛くて・・・私は正直もうだめだと思った。

 爆弾をしかけてから、爆発までは10分だけ。
 それ以上だと神羅の特殊部隊に解除されるおそれがあったから。
 時間はぎりぎりしかない。

 もう・・・私はここで死ぬのかもしれない・・・。
 胃の下の方からわきあがってくる激しい焦燥と、
 背中からおそいかかってくる絶望感とで、目の前が赤くなったり黒くなったりした。


 クラウドが、すぐそばにきてくれるまでは。

 「だいじょうぶか?」

 彼の声に、心臓がとびでそうになったけど、目の前が一気に明るくなった気がした。

 ・・・彼が私を助けてくれた。 

 私・・・死なないですむ、ということと、
 彼が助けてくれた、ということと・・・
 どっちがうれしかったのかわからないくらい、感動しちゃった。

 「うかつ!!足がはさまって・・・。・・・サンキュー!」

 ・・・なのにこんな言い方しかできない私は、損な性格。


   3


 逃走中は、単独行動をとることになっていた。
 一網打尽につかまる、という最悪の事態を避けるために。
 もちろんそのあと、列車で落ち合うことになっていたんだけど・・・
 約束の時間になっても、彼が来ない・・・。
 列車は彼を乗せないままに出発してしまった。

 私は死にそうに心配になってきた・・・。

 「クラウドさん、こなかったっすね」

 「クラウド・・・やられちまったのかな」

 やめて! ビッグス!! そんなこといわないで!

 「ケッ・・・!あの野郎が金ももらわねえでいなくなるわけはねえだろ」

 うん・・・お金はともかく、あんなに強いんだもの・・・そうよね。
 でも・・・。
 私が信じてもいない神様にお祈りしたくなっちゃった頃・・・
 突然に列車の窓が開いて・・・!

 彼が飛び込んできた。

 「約束の時間に遅れたようだ」

 ほんとに、遅れすぎだよ・・・。心配したんだから・・・。

 「ケッ・・・!心配させやがって勝手な野郎だ」

 「ほう・・・?心配してくれてたのか」

 「なにっ!! チッ!! 遅刻のぶんは報酬からひくからな」

 ふふふ、やっぱりバレット、心配してたんだ。
 でも、ほんとにもうあえないかと思った・・・。
 素直にならなきゃだめだね。私。
 でないと、二度とあえなくなったとき、きっと後悔する・・・。

 「やだ! クラウド!! 顔まっくろ・・・はい、できあがり! 
 ね! 魔晄炉で助けてくれてありがとう!」

 ありがとうって、ちゃんといえてよかった・・・ほんとうに。


 クラウドって、ミッドガルのことをあんまり知らないみたいだったから、
 車内のモニターでいろいろ説明してあげた。

 「空中にうかぶ都市か・・・おちつかない風景だな」

 クラウドが列車の窓から上を見上げて言った。
 
 「はあ? あんたがそんなふうに感じるとはな。意外だぜ」

 バレットはそんな風にちゃかしたけど、私にはわかる気がする。
 彼は、クラウドは、ほんとはそんなにクールでもなんでもない人なんじゃないか、と。

 「上の世界・・・プレート都市・・・
 あのくさったピザのせいで下の人間がどんなに苦しんでいることか・・・。
 下の世界は今じゃあ汚された空気のたまり場だ。
 おまけに魔晄炉はどんどんエネルギーを汲み上げちまう。
 おかげで土地は枯れる一方だ。空気をきれいにする力もなくしちまった」

 そう・・・バレットの言うとおり、このままではスラムには明日がない。
 かといって、人々は神羅グループなしでは仕事もなく、
 食べていくこともままならない。

 「わかってるさ・・・。好きでスラムに住んでるやつなどいない。
 みんな、この列車とおなじ。 敷かれたレールには逆らえないんだ」

 そんな袋小路の中で、わたしたちはなにをめざしているのだろう・・・?

 

 ようやくアジトにかえりついて、モニター画面を見た私は愕然とした。
 予定を大幅にうわまった規模で爆発事故が起きていたのだ・・・。
 ・・・これじゃ、魔晄炉のそばにいた民間人は・・・!
 犠牲者の数はモニターではわからなかったが、想像はできた。
 私はもう、大量殺人者、なんだ・・・・・・・・

 「どうかしたのか?」

 ふいに話しかけてきたのは・・・彼だった。 クラウド・・・。

 「・・・こんなに爆発しちゃってる・・・」

 それだけ言うのがやっとだった。

 「・・・俺はもとソルジャーだ。何人殺したかわからない。
 しかも、あの神羅のために・・・だ」

 ぶっきらぼうだったけど、彼はたしかに私を慰めてくれようとしていた。
 おなじ傷を持つ人間として。
 そう・・・、私が彼に惹かれた理由は、そのきれいな金髪でもなく、
 すらりとした外見でもなく、実はその青い瞳ですらなく・・・
 彼のなかの、何かが欠けている感じ、
 なのかもしれない。
 
 心の奥のその欠落が、私の中にもある気がする。
 
 それは「孤独」というものなのかもしれないけれど。



 「おい、クラウドさんよ。聞きたいことがあるんだ」

 上から降りてきたバレットがいった。

 「今日、オレたちが戦った相手にソルジャーはいたのか?」

 「・・・いや、いなかった。
 もしソルジャーと戦っていたらあんたたちが生きているはずないからな」

 これにはバレットもかちんときちゃったみたい。
 ほんとのことなんだろうけどね。

 「自分が元ソルジャーだからって偉そうに言うんじゃねぇよ!」

 ・・・売り言葉に買い言葉。
 クラウドは「上で待ってる」と言い捨てて、上がっていってしまった。
 ひきとめにいこうとしたら・・・ティファが後を追っていったから、
 私はそこから動けなくなった。
 だって・・・どう考えたって、ティファの役目だもん、ね。

 結局思った通り、彼はティファに説得されて、翌日の作戦にも参加することになった。

 次のターゲットは「5番魔晄炉」。
 今日みたいな予定外の爆発を起こすわけにはいかない。
 私は徹夜覚悟でもう一度調整をすることにした。
 もうひとつ、作りたいものもあったし。
 それは・・・クラウドのIDカード。
 私、好きな人のために何か作るのが好きなタイプなんだ。
 だから、これは特別心をこめて、いいものつくってあげたい。


   4

 今回も潜入には列車をつかうことになっていた。
 そのためには新しいIDカードが必要だった。
 昨日の件でIDスキャンの検問が強化されてしまっていたから。

 「はい。クラウド、あなたのカードよ」

 「ああ」

 うけとって、彼は無造作にカードをしまいこむ。
 もう少し・・よく見てほしかったな・・・。
 でも、しかたないよね。 偽造のIDカードなんか。

 今回のミッションではティファも一緒だった。
 列車に乗り込んで、しばらくするとティファがクラウドを呼んで言った。

 「ね、クラウド、こっち! 路線図モニタでもみてよ」

 ・・・それ、昨日私が見せたけど・・・。
 でも、クラウドは黙ってティファのそばに行った。
 少し妬けちゃった・・・わかってはいたんだけどね。
 私は、ふたりの姿が見えないように、隣の車両に移った・・・。

 そんな時、突然、とんでもなく大きな警報の音が鳴り響いた。

 一瞬、頭の中が、かあっとあつくなった。・・・またミスしたんだ、私。
 泣きたいくらい情けなかったけど、ぐずぐず悩んでいる暇はなかった。

 「どうなってんだ!!」
 
 バレットがどなる。
 
 「まずいことになっちゃったわ。説明はあと。はやく!こっちの車両に!」

 落ち着かなきゃ。いちおう対処法は考えたじゃないの!
 私は必死で叫んだ。

 「とにかく、走って!作戦2にチェンジよ!」

 作戦2の潜入ルートは、工事中の路線のダクト。
 私とビッグス、ウェッジが先行してルートを確認する・・・。
 胸が破けそうなくらい、走って走って・・・なんとか目的地に着いた。

 「よし、まちがいない。ここから上がれば、ターゲットの近くにでる」

 「じゃ、俺達はひきあげっすね」

 そう、そうね・・・。もう私たちがいる必要ないものね。

 「あの、私、クラウドにあやまっておきたいから・・・少し残るね」

 「へ? あやまるって、なにをっすか?」
 
 ・・・こういうとき、ウェッジのとぼけたところって、
 なんだかすごくいいところに見える。げんきんね、わたしも。

 「IDカード、私のミスだから」

 結局、みんなでクラウドたちが潜入するまでを確認することになった。
 ビッグスもウェッジも、心配な気持ちにはかわりなかったんだろう。
 私たちなんかが心配する必要なんて、なにもなかったんだけど。

 ・・・あとになってみると、予感があったのかもしれない。あの時すでに。
 もう、会える時間はごくわずかだ、と。

 ようやくクラウドたちがやってきた。

 「ごめんなさい。列車のIDスキャンのミス。私のせいなの。
  クラウドのIDカード、私の特別製にしたから・・・。あんなことに。
  心をこめたつもりだったんだけどね。
  失敗しちゃった。こんどはもっとましなものプレゼントするわ」

 「わかった」

 「さきにアジトにかえってるね」

 「ああ」

 ・・・帰ってもう少しましなプレゼントを研究する
 ・・・それくらいしか私にはできないものね・・。


   5


 待っている時間は長かった。
 モニターで爆破が成功したのはわかったけど・・・
 帰ってくる予定の時間をとっくに過ぎても、クラウドたちは帰ってこなかった。

 5分刻みで時計を見つめ続けて・・・予定の時間を3時間以上も過ぎた頃・・・
 ようやくバーのステップを上る足音が聞こえてきた。
 私はドアに飛びついて、勢いよく開けたんだけど・・・

 「おう・・・帰ったぞ」

 そこには暗い顔をしたバレットと、ティファしかいなかった・・・。

 「ク、クラウド、は??」

 聞きながら私は胸の奥に冷たい汗が流れるのを感じていた。

 「落ちやがった・・・」

 おちたって・・・・・・・???

 「それで?! 見捨ててきたの!? ひ、ひどいよ!!!」

 思わず叫んでしまった・・・。

 「よせ」

 バレットに言われて、ようやく我にかえった。
 ・・・そうね、ティファが平気でいるはずがない。
 ・・・私、なんて思いやりがないんだろう・・・。

 「生きてるわ」

 え?

 「なんだか、そういう気がするの。 私、クラウドが死んだりしたら、
  きっとわかると思う。 でも、今はそんな気がしないもの」

 ティファが胸を張ってそういった・・・。
 そうかもしれない・・・ティファがそういうのなら・・・。
 私も、信じることにする。



 それでもその晩は眠れなかった。
 眠ろうとしても全身から力が抜けていくばかりで・・・。
 なんだか、眠る、という行為の仕方を忘れたような、そんな気さえする夜だった。

 
 翌日。

 ある情報屋が私たちのアジトを訪れた。
 なんでも6番街の顔で知られる「ドン・コルネオ」が、
 神羅と裏でつながっているらしいっていう情報をもって。

 「あんなスケベ親父は小悪党だ。ほっとけ」

 バレットはそういった。

 「でも・・・なんだか気になるわ・・・。ねえ、あの人ってすごく女好きで、
  毎晩、別の女の人を・・・って、噂よね?」

 ティファが思案顔でいう。

 「ああ。スケベなやつだぜ。なんでも3人はつれてきて、
  その中からお相手を物色するんだそうだ」

 「私、それを利用して潜入してみるわ」

 「なんだとお!! だめだ!だめだ!!」

 「平気よ。いざとなれば殴り倒して逃げるから・・・
  それになんだか、じっとしていたくないのよ」

 ・・・それはわかる。わたしも・・・。

 「あの、あの、私も一緒に潜入しようかなあ・・・」

 思い切っていってみた。

 「だめよ、ジェシーは」

 ・・・なんで? そりゃあ、私はティファみたいにグラマーでも美人でもないけど。

 「ジェシーの戦闘力じゃあ、てごめにされるだけって可能性もあるしな。
  第一ここで街の様子をモニターしなきゃならんだろう。
  行動の後は警戒が大切だぜ」

 恥ずかしい・・・。なんだか最近すごくひがみっぽくなっちゃった・・。


 ティファがでていった後、私は言われたとおり、7番街の様子をモニターし続けた。

 異変があったのは、夜中近くなったときだった・・・・。

 「バレット!!! これ!!」

 「なんだ?!」

 7番街をささえるプレートの支柱のまわりに、異様な数の神羅兵が集まっていた。

 「なんだと思う??」

 「・・・7番街もろとも・・・か? まさか・・・おい!!ビッグス!!ウェッジ!!
  いくぞ!!」

 私たちは、なけなしの武器を手に、
 7番街プレート支柱に向かって飛び出していった・・。


   6

 
 支柱の下には10人前後の神羅兵がいた。
 そしてすでに爆破装置らしいものを上部に運び始めている兵士達が5,6人・・・。

 無我夢中で戦って・・・。
 私、人を銃で撃つのはできなかったはずなのに・・・
 もう、そんなことを言っていられる状態じゃ、なかった・・・。

 銃声・・・硝煙・・・悲鳴・・・・。

 それをかいくぐって、とにかく上部へつづくステップをめざす・・・。
 螺旋状のステップの、3分の1くらいをすぎたあたりだったろうか。

 ウェッジが撃たれた。

 助け起こすこともできなくて・・・。

 すぐ上でビッグスも。

 「ジェシー!! 立ち止まるんじゃねえ!! やられるぞ!!」

 バレットに言われて、泣きながら、私はのぼった・・・。
 つめたい銀色のステップを。

 
 
 その瞬間の痛みは、よくわからなかった。
 がくん、と膝が落ちて。
 視界にバレットの苦痛にゆがんだ顔が入った・・・。

 それを見て、ようやく私は、自分が撃たれたことを理解した。

 「行って・・・!!」

 バレットが大きな背中をむけて、ステップを登っていく・・・。

 胃の下のあたりから、どんどん血が流れていくのがわかった・・・。
 ゆっくり、私はそこに身を横たえた・・・。

 不思議に怖くはなかったけど・・・寒かった。
 寒くて。

 寂しかった。

 「ジェシー?!」

 誰かに呼ばれて、やっとのことで目を開けて・・・。

 ・・・・信じられない。
 
 クラウド。
 本当に、あなた、なの?

 「あ・・・・クラウド・・・。最後に・・・話せて良かった・・・・」

 「最後だなんていうな」

 「もう、いい、・・・・いいの・・・・私たち・・・・私たちの作戦でたくさん・・・
  ・・・人、しんじゃったし・・・・・きっと・・・・そのむくい・・・ね」

 「ジェシー・・・」

 「行って・・・。上・・・バレット、ひとりで・・・」

 「わかった・・・・・・」

 ・・・彼の足音が遠ざかっていく・・・。
 その最後の一音まで、聞き逃さないように、私は全身の意識を耳に集中した。

 さようなら・・・・。

 だいすきだった、よ・・・・・・。



 ああ・・・すごく・・・暗いね。夜中になったみたい・・・。
 もうすぐ、ほんとのお別れだね・・・。

 バレット。ティファ。・・・クラウド。

 どうか無事でいて・・・・。
 私を、時々は思い出してね・・・・。


 ・・・誰から見ても、私の一生は不幸なものだったかもしれない。
 ・・・でも、世界を恨んだりしていません・・・。


 


 お願いです。

 どこかにこの星を救える人がいるのなら、どうぞみんなを救ってあげて。
 これから生まれてくる子供達が、私の分も未来を夢見てくれるように。

 そうしたら、私は、きっとまたこの世界に戻ってくるから。

 その時、私は大空を舞う鳥の一羽かもしれない。
 大地をおおう草花のひとつかもしれない。

 それでも、きっと新しい命になって帰ってくるから・・・・。

 そう・・・500年後くらいに・・・・。

 だから
 どうぞ、お願い。 星を救って・・・・・・。
 
 私が再び生まれ変われるこの星を。

 私にも、「約束された地」である・・・この星を・・・・。




                                     end