ちゃちゃさんの作品




  10


「その後も何度も死のうとしたわ。
 ・・・・・でも、死ねなかった。
 この体は呪われている。
 神の与えた・・・・罰だと・・・・・」

「それは違う!ルクレツィア!
 悪しきジェノバの細胞が君の体を狂わせたにすぎない。
 それが神の罰であるものか!」

「・・・・・そうだとしても。
 私はあなたといっしょに行くわけにはいかない・・・・。
 ほんの少しの安らぎも、私には得る権利がないわ」

「ルクレツィア・・・・」

「ごめんなさい・・・・」

「ルクレツィア、私の目をよく見てくれ」

「え・・・・」

「見るんだ!!」

思いがけないくらい強い力で肩をつかまれ、私は彼の、深い赤に染まった瞳を見つめた。


・・・・あんなに優しく穏やかだったヴィンの黒い瞳が・・・・。

これは忌わしき獣の眼の光だ・・・・。

見つめ続けるのは、あまりに痛すぎて、私は目をそらした。

「見ろといってるんだ!!」

「・・・ごめんなさい。みんな、私が・・・・」

「・・・・この目を見るたびに、君はそうやって苦しむことになるだろうな。
 そういう意味では、私たちはいっしょにいたって、幸せにはなれまい。
 永久に、ね」

「ヴィン・・・・・・」

「だったら、ひとりで懺悔するも、ふたりでするも、同じだろう?」




・・・・・・掴まれた肩から、ヴィンセントの思いが痛いほど伝わってきた。

・・・・すがりついてしまいたい。

でも、それはしてはいけないことだ。

わたしは一人で耐えなくてはいけない。

・・・・・・あの子の孤独を思えば。

「私の望みは、早くあの子の所にいくことだけ。
 そんな私といてもあなたは不幸になるだけだわ。
 あなたのことを幸せにしてくれる人を探して・・・・お願い」

そう言うと、ヴィンセントはまるで憎い相手を見つめるように赤い瞳を細めた。

「セフィロスはもう天国にいるさ。彼の罪は死で浄化されたからね。
 でも君は、いつか命が尽きたとしても、確実に地獄行きだぞ。
 私が神ならそうするね」

「そう、ね・・・・・でも、それでも・・・・」



「・・・・・・もう君の意見は聞かない。
 私は、君がほしい。
 言うことを聞かないなら、力づくで連れていくまでだ」

「ヴィン・・・!」

「・・・・やっと言えた。
 なぜあの時言えなかったのかと、ずっと後悔し続けたよ・・・・。
 私はもっと自分のエゴを君にぶつけてもよかったんだ。
 それくらい、愛していたんだからな。
 そして、それは今も変わらない。
 たとえそれがもっと君を不幸にするとしても、連れていく」



たたきつけられるような愛の言葉が
私の胸を抉った。

それは苦痛にも似た、衝撃だった。

その瞬間に、必死で閉ざしていた私の真情が、
すべてを押し流してしまった。



・・・・・許されたい。

・・・・・愛されたい。

・・・・・愛したい。

・・・・・彼と、いっしょにいたい。



思うことさえ罪深い、はずだった。

でも、もういい。

それが罪なら、その罪も背負っていこう。

彼がいっしょに背負うというのなら、いっしょに背負っていこう。

失うものなど、もう何もないのだから・・・・・・。



溢れて流れる涙を、わたしはもう隠さなかった。

ヴィンセントの表情がやわらぐ。

・・・・・・言葉はもう、必要なかった。










祠の外には、チョコボがおとなしく主人を待っていた。

「行くぞ」

「ええ」

心の中で、この祠に・・・・私の墓標に別れを告げ、チョコボに乗る。



大きなチョコボは、私達ふたりを乗せ、楽々と崖を駈け上っていった。

山の上に立ち、ヴィンセントの背中ごしに見下ろした外の世界は、
黄昏色に染まっていた。



・・・・・・悲しいくらいに美しかった。

地平線が丸く見えている。

鮮やかな茜色を映した海。

その中を道とも呼べないような道が、ずっと彼方まで続いていた・・・・。



「・・・どこへいくの?」

「決めてない。
 どこでもいいさ。
 君さえそばにいるなら、地獄も天国も、私にとっては同じ場所だ」





・・・・・・・この星のどこかに・・・・・・

私達は、いつか、安息の地を見つけられるのだろうか。

どこかに、私達が本当の眠りにつける、そんな場所があるだろうか。

・・・・もしかしたら、どこまで行っても
私達にとって、その「どこか」はないのかもしれない。



誰も私達を祝福はしないだろう。

ふたりでいても、ふたり分の孤独が永久に続いていくことになるのかもしれない。



それでも。



私達はすでにたどりついたのだから。

長い長い、遠回りの末に。

お互いの元にたどりついたのだから。




もう一度。



・・・・・・・・・・生きていこう。



この星の上で。

















fin