FF・A ――最終章――
1.Mission!
警報と銃声と爆音がジュノン港全体にこだましていた。
クラウド、レイナ、宝条の三人は早くも碇泊場にまで至っていた。もちろん、道中、立ちはだかるフィガロ兵や警官たちを片づけたうえで。
ガッン!
さらに立ちはだかったフィガロ兵を射殺したクラウドは、周囲の警戒を怠らぬまま己の前方を見上げた。
彼の視線の先には、フィガロ海軍ご自慢の強襲揚陸艦・エドガーが、颯爽とその姿を見せつけている。蒼天の下、そびえるように海上に浮かんでいるそのさまは、なにやら荘厳さすら感じさせた。
とてつもない全長であり、火力も十分すぎるほどのものだ。そのあまりの大きさゆえ、敏捷性には乏しいが、航海速度はフィガロ海軍の揚陸艦の中でピカ一である。
――作者はミリタリー関係ようわからんので、あんまツッコまないよーに――
だが、あまり長い時間、見とれている場合でもなかった。
「アーレスさん!」
「・・・わかっている」
次の瞬間、レイナとクラウドは背後に気配を感じ取ると同時に、体を反転させた。
「・・・」
三人の前方数メートル先には、スキンヘッドとサングラスを特徴とする黒人の姿が確認できた・・・。
港の入り口ともいえる倉庫街。
クエイクは、まるで"怒れる鬼神"のような雰囲気を発している。マサキでなければそれだけで押しつぶされそうである。
・・・
マサキの傍らにいるユフィも、クエイクの側で身構えている彼の部下たちも、みな、顔は青ざめ、脂汗をびっしょりとかいている。
いや、正直、マサキ自身も同様の心境だ。そう見えないのは彼のハッタリによるものであった。
「な〜に怒ってんだか知らねぇけど・・・腐れ縁もここまでにしようぜ。互いに互いのツラ見飽きてんだからよ」
マサキは飄々とした表情と、とぼけた口調を見せた。たしかに普段からそういった感じの男ではあるが、このときのそれらは、あえて作り出したものであった。本心を悟られることを嫌ったのであろう。
「・・・てめぇのその余裕も、とぼけた態度も、ガキのころから気に入らなかった・・・だが、そんなことよりも――そんなことすらどうでもよくなるほど、ヘドが出そうなほど気に入らねぇことがほかにある・・・」
クエイクは普段よりさらに低いトーンでそうつぶやきながら、マシンガン並みの大きさはある、特注の拳銃を持つ右手をゆっくりと上げた。
「ほかにもあんのかい? ったく、手厳しいね・・・」
「にやけている」とも「睨み付けている」ともとれる、不敵な表情を浮かべながら、マサキも、クエイクと全く同じ行動をとった。
ふたりに合わせるかのように、ユフィも、そしてクエイクの部下たちも身構えた。
「てめぇは・・・てめぇは何度オレの一番大切なものを奪えば気が済むんだぁぁぁっ!!」
クエイクの大地を揺るがすかのような叫びを合図にしたかのように、ふたりは引き金を引くと同時に、それぞれドラム缶やら木材らしきものの陰へと身を移した。
当然、その間も互いに発砲を行っており、双方ともに左肩に傷を負っていたが、ふたりにとってはほんのかすり傷である。そんなことお構いなしに銃撃を続けていた。
一方のユフィらはそれぞれファイガ、ブリザガといった魔法を発動させながら、やはり資材や、あるいは倉庫自体を盾にして、魔法及び銃による攻防を開始していた。――
2.追憶
「・・・オレだ・・・」
「・・・いまどこだ?」
「エドガーの甲板だ。どうやら奴らに占拠されたらしい」
「・・・奴の仲間はまだ倉庫街付近で戦っているが?」
「・・・奴のやり方は、おまえも知っているはずだ・・・」
「それもそーだ」
ルードは通信機越しにレノとやりとりを行っていた。
いま、この現場の指揮権はレノに委ねられている。昨日ジュノンに入ったばかりのこの男に。
「・・・とりあえず出港させろ。沖に出た時点でキャノンの餌食にする」
司令室のレノは、窓ガラス越しに映る、セフィロス事変の遺物を見つめながら、冷たく言い放った。
「待て・・・オレは脱出できるが、ほかの兵たちは――」それに対し、相変わらずの口調ながらも良識的な指摘を行ったルードであったが、あくまでもさりげない感じで、レノが彼の言葉を遮ってきた。
「おまえさえ残っていれば、それで十分だゾッと・・・」
その口調はさらに冷たいものになっていた。決してルードに対して親しみややさしさをかけた言葉ではない。
「・・・エドガーは大統領お気に入りだが・・・?」
「二番艦が完成している」
「・・・了解・・・」
やはりいつもの口調ながら、なおも食い下がるルードに対し、レノは一切口調を変えなかった。それに対し、ルードはそれ以上の言葉が出なかった。
10数分後、エドガーは、進路をコスタ・デル・ソルに向け、ゆっくりと出港を始めた。――
ふたりの戦いは、いつしかその舞台を倉庫の中へと移していた。「薄暗い」というよりは、"薄明るい"とでもいうべき空間に。
ガァン! ガッン!!
「なぜ、オレが瞳を蒼くしたか、わかるか!?」
場所が場所だけに、互いの銃声もクエイクの叫び声も、いつもより耳に響いてくる。
「てめぇを殺るためにだぁぁぁっ!!」
「瞳を蒼くする」――この言葉は、すなわち、「ソルジャーになる、志願する」ということを意味する。
「ヘッ! そいつぁ、光栄だね!!」
マサキは相変わらず憎まれ口で返しながら、資材の陰から上半身を乗り出しつつ、「これでもか!」といわんばかりに引き金を引いた。
とはいえ、口調とは裏腹に、クエイク同様、ものすごい形相をしている。当然ながらいまはトレードマークのサングラスはかけていないので、そのさまが十分すぎるほど確認できる。
銃声や、時折、弾丸が鉄製の什器に当たった際の、「カァーン!」といった甲高い音などが聞こえる中、ふたりは、やがて完全に身を乗り出し、10メートルほどの間隔を置いたうえで対峙すると同時に、互いに銃を連射した。
「グッ・・・!」
次の瞬間、連続した動作の中で、身を乗り出す前にいた場所から見て対面の資材や貨物の陰に飛び込んだふたりであったが、互いの弾丸は奇しくも互いに同じ箇所――それぞれの左脇腹を直撃し、双方とも同様のうめき声を上げた。
・・・
時間にして数分の沈黙が流れたあと、ふいにクエイクが言葉を発した。
「・・・な、なぜ、あのときあいつを撃った・・・?」
「・・・あ、あの場の状況は・・・てめぇだって、よく知ってるだろ・・・!」
それに対し、マサキは、貨物の陰に身を納めたまま、愛銃グロッグになにやら装着したたうえで、血に染まっている脇腹を押さえながら答えた。おそらくクエイクも同様のシチュエーションの中にいるであろう。
双方ともに、痛みと苦しみを堪えながら、声を絞り出すように言葉を発していた。
「・・・り、理屈はわかる! オレがおまえの立場でも、同じことをせざるを得なかっただろう。だ、だがな・・・」そういうと、クエイクはひと呼吸置いたうえで、苦痛を何とか押さえる顔つきのまま、荒い声を上げた。
「なぜ、全く何のためらいもなくあいつを撃ったぁっ!! おまえらふたりは愛し合っていたんじゃなかったのかぁっ!?」
いまにも、顔中の血管が破裂し、顔全体から血しぶきを上げるかのような形相であった。
「・・・」
マサキは珍しく無表情のまま無言であった。
「て、てめぇのことだ・・・少佐――イリーナ少佐のときもそうだったんだろ? なぜ、そう簡単に人を殺せる!?」
若干は収まっているものの、クエイクはやはり興奮状態のままであった。
「・・・」クエイクの問いに対し、直後にはなにも答えようとしなかったマサキであったが、しばらくすると、
「・・・フン・・・」
と、鼻で笑ってみせた。あえて相手に聞こえるほどの音量で。
「なにがおかしいっ!」それに対し、体裁など構わずに唾を吐き散らしながら応えたクエイクであったが、マサキはそれをサラリと受け流すかのような口調で言葉を続けた。
「いや・・・意外と青くせぇよな、おまえ」
その言葉に、クエイクは険しい表情のままではあるが、どこかキョトンとした感じもする顔つきを一瞬だけ見せた。
「っていうか、てめぇだって、いままで何人殺してきた? 人殺しにきれいも汚いもねぇよ。オレもおまえも"ケツの穴のムジナ"だよ」
「・・・ "同じ穴のムジナ"だぁっ!!」
普段のクエイクだったらマサキの軽いボケに対し、そのボケ自体にツッコむのではなく、そのくだらなさに、鼻で笑うかのようなツッコミを入れたうえで受け流していたであろうが、このときばかりはムキになってツッコみつつ、資材の陰から身を乗り出し、相手がまだ貨物の陰に隠れているにもかかわらず、闇雲に発砲を行った。
ちょっとした混乱状態に陥っていたのであろう。マサキの過去に対する指摘は、自身にとっても耳の痛いものであるようだ。
(・・・そろそろ頃合いだ。ヤローとのケリつけるつもりでいたが・・・やれやれ、もうしばらくつきあい続くんかよ・・・)
クエイクの無茶な砲撃の中、マサキは一回ため息をついたうえで、心の中でつぶやいていた。
(ユフィさんからガメといて正解だったぜ)
そして、発砲が中断した直後、グロッグの側面に一瞬目をやりつつ、コダチを鞘から抜いたうえで、右手でグロッグを己の前方に掲げ、左腕は突きを繰り出す体勢をとりながら、貨物の陰から勢いよく身を乗り出し、クエイクがいた方向へ全速力で駆け出した。
「!」
マサキの動きを素早く察したクエイクは、弾丸の補充のために身を寄せていた資材の陰から自身も勢いよく身を乗り出し、腰に帯びていた予備の拳銃を連射することで迎撃を行った。このタイミングで補充など完了するわけがない。
(チッ・・・!)彼は心の中で舌打ちをしながら、
「おまえは生きていてはいけないんだぁぁぁっ!!」
などと、どっかで聞いたことのあるセリフを大まじめに叫びながら、引き金を引いた。
「カミーユか、てめぇは!?」
それに対し、マサキはツッコミを忘れずにいたうえで――っていうか、今回の言動を見る限り、ジェリドも入ってるクエイクくんなのだが・・・――、"シールド"を発動させながら突進を続けていた。
そう、グロッグの側面には"シールド"のマテリアを装着しておいたのである(ちゃんとFF7にあるぞ)。
まあ、それとて「万全策」ではない。当然、何度も攻撃を続けられれば効力を失うのだが、どのみち勝負は一瞬で決まる。
!
その一瞬だけ、まさに時が止まった・・・「使い古し」ではあるが、こういう表現しか見当たらない・・・
マサキの突きの"型"は、きれいにフィニッシュを体現している。
が、それ自体はそのじつクエイクにかわされていた。
「クッ・・・!」
にもかかわらず、クエイクは体勢を崩している。
かわされた瞬間、それをも折り込み済みだったマサキが、蹴りを繰り出していたのである。
直後、マサキはさらに前方に向かって突進していった。
彼の前方には壁がある。
「成せばなる! マサキ=シンドーは男の子ぉぉぉっ!!」
マサキはそう叫ぶと、壁に向かい、再度突きを繰り出した。その瞬間だけ彼の顔の輪郭はきれいな円を描いていた。疾風(はやて)のよ〜にぃ〜――って、この作品はロボットものではないのだが・・・。
――誰にもわからん、自己満足ネタです。気にしないでください・・・――
ともかく、それにより、壁はガラガラと音を上げながら崩れ、人ひとりくらいは通れる穴が生じた。太陽光が異様にまぶしい。
その代わり刃も粉々に砕かれた・・・。
「! 逃がすかぁぁぁ!!」
マサキの考えに気づいたクエイクは、すぐさま体勢を直し、銃を構えた。
脱出口は確保したマサキであったが、いま彼はクエイクに対し、背を向けている。
(マルガリーチ・・・少佐・・・)
勝利を確信したのか、おもわずクエイクは、ひとりの女性の名とひとりの女性の呼び名を心の中でつぶやいた。
(・・・)
だが、逆光の中に映るマサキの表情は、意外なほど涼しげなものであった。
それもそのはず、彼が事前にユフィからガメておいたアイテムは、もうひとつあったのだから。
「・・・ま、どうせ近いうちにまた会うだろ・・・」
マサキはそうつぶやくと、予備の拳銃用の、腰に巻いているガンベルトに装着しておいた手榴弾を素早く取り出し、ピンを抜くのとほぼ同時に手前に転がしつつ、その場から身を隠した。
「!」
ドォォォォッッン!!
次の瞬間、倉庫は炎と煙に包まれた。
3.Under the moonlight
それは、ほとんど音もなく放たれた。
ドオオォォォッーン!!
青色がかった光の塊は、一瞬にして巨大な揚陸艦エドガーを飲み込み、爆音が何度も鳴り響いた。
(・・・タブー視されている魔晄まで使うとは・・・)
その光景をジュノン港の碇泊場から目にしたルードは、一瞬、司令室のある方角に目をやったうえで、街の方向へと歩み始めた。
これ以後、彼は完全にフィガロ軍及びタークスからその姿を消すことになる。
「・・・意外と呆気ないものだな・・・」
レノは爆発を己の瞳に写しながらそんな言葉をつぶやいた。
周りにいる副官やら部下やらは、口々に賞賛と歓喜の声を上げている。
「奴に関しては、できればこの手で討ち取りたかったが・・・まぁ、任務というものは『遂行』が最優先だろう」
相変わらず冷たい口調ではあったが、かすかに頬を歪めている。
「これで、軍の中での大佐の地位も確立された、というものですな」
下世話な部下が下世話なセリフを吐いてきたが、レノは微笑をもって回答とするのみであった。普段なら、「余計なことをいうな」とばかりに、とりあえず無言で拳が飛んでいたであろうが。
「・・・それは、結構なことで・・・」
!
だが、そんな彼らを急激にクールダウンさせる雰囲気が、自動ドアの開く「ウィン!」という音とともに、ふいに現れた。
一同がそちらに目をやると、そこには、傷だらけの巨漢――クエイクの姿があった。
「おお・・・大尉。ご無事でしたか・・・」
彼の姿を確認したほとんどの者が笑顔をもって彼の側に歩み寄っていったが、レノのみは異なる行動をとった。
急に険しい表情を浮かべ、胸に手を伸ばし、銃を抜く動作を見せた。
ガッン!!
が、一瞬遅く、彼が銃口をクエイクに向けた瞬間、クエイクの放った弾丸が眉間を捉えていた。
!
「・・・少佐を見殺しにした――いや、事実上、てめぇも片棒かついだといえる、その報
いだ・・・」
周囲の誰もが言葉を失う中、クエイクは珍しく冷たい口調でつぶやいた。
数秒後、連続して銃声が鳴り響いたうえで、その場は死体の山と化した・・・。
満月が不気味な色を放っている。
海面に映った姿のほうが、よっぽどきれいだ。
かすかに顔を紅潮させたクラウドは、誰もいない深夜のビーチで酔いを醒ましていた。
グラス片手に対岸のかすかな明かりを見つめながら、ただ黙って砂の上に座っている。
「マサキ知らない?」
そんな彼に声をかけてくる者がいた。ユフィである。
「・・・女と一緒なんじゃないのか?」
クラウドは姿勢を全く崩さずに答えた。
「? 女・・・? ああ、レイナね」ユフィはそういうとクラウドの隣に腰を落とし、ニヤケた表情を作ったうえで、
「妬いてる? なんたってあの娘、エアリスのコピーだもんね〜」
と、続けざまにからかいの言葉をかけた。「フフ〜ン」といった感じの笑みを浮かべているのはいうまでもない。
「・・・クローンはしょせんクローンだ。決してエアリス本人ではない・・・」
クラウドはグラスの酒をひと口なめたうえでそう答えた。相変わらずの無表情である。
「・・・つまんねぇ答え・・・ま、あんたらしいっていえばあんたらしいけど」ユフィはあえてとぼけた目つきで夜空を見上げつつ首をすくめ、
「それもそうね・・・それに、あのふたりのあいだには『愛』ってモン感じないのよね。マサキはもちろん、レイナのほうも『ただじゃれてるだけ』って感じだしね。ま、『まんざら』ではないんだろーけど。とくにレイナは・・・」
直後に表情をいつものものに戻した。
ユフィの言葉が終わると、ふたりのあいだに沈黙が流れた。
普通なら場がもたなくなりそうではあるが、この男は昔からこういう男である。ユフィもそれを知っているので、ただそれのみ聞こえる波の音のリズムに心を委ね、なにも話さずにいた。
――なんとなく雰囲気が・・・
ふたりの置かれたシチュエーションはそういう感じのものではあったが、このふたりのあいだにもそれらしき情は存在しないようだ。
「・・・すまなかったな、おまえらを撹乱に使って・・・」
その雰囲気にいたたまれなくなったわけでもないだろうが、今度はクラウドのほうから、珍しくそんな言葉がかけられた。
「・・・」
「・・・なんだよ?」
「いや、あんたからそんな言葉が聞けるなんて思わなかったから・・・」
「・・・悪かったな・・・」
このふたりらしいやりとりである。
「それにしても・・・まさかルードが協力してくれるなんてね」
ふたたび、今度はわずか数秒の沈黙のあと、ユフィは昼間の話題を持ち出した。
「・・・あの男も、そしてイリーナも、最近のレノのやり方には不満を覚えていたようだ。とくにルードは、フィガロ政府のやり方までもが気に入らないらしい」
クラウドはそう答えた。
(シドのオヤジも、どっからそんな情報仕入れてくるんだか・・・?)ユフィはそんなことを考えながらも、
「なんにしても、あんたの作戦――エドガーを奪うと見せかけて、フィガロ最速の突撃艇・マッシュを奪ってトンズラ――うまくいったわね。さっすが伝説の英雄」
などと、またもからかい口調のセリフを口にした。
――いや、だからミリタリー関係、ホントわかんないんだってば。それと、作者のネーミングセンスもツッコまないよーに――
(・・・毎回うまくいけばいいんだがな・・・)
クラウドはユフィの言葉を無視してそんなことを考えていた。一方では自分の立案能力に酔ってはいたものの、もう一方では次に向かって気を引き締めている。
だが、次の瞬間、そんな彼の表情を一瞬だけ崩すようなことをユフィが口にした。
「・・・ねぇ、10年前のあのとき――このコスタ・デル・ソルに着いた時点では、どっちが本命だったの? ティファ? エアリス?」
三たびクラウドをからかったわけだが、これまでで最高のニヤケ顔であった。
「・・・」それに対し、一瞬、言葉につまったクラウドであったが、すぐさまいつもの彼に戻り、
「・・・いくらいまのオレが『おしゃべりがすぎている』からといって、『ついつられて』で、その手の質問に答えると思うか?」
「チッ・・・」
ユフィは苦い表情を浮かべながら舌打ちをした。
「・・・」
自然な感じで、顔をユフィの視線には入らないほうへ向けたクラウドは、珍しく微笑を浮かべていた。
最後の最後には相手を手玉にとる――何となく彼らしい。
4.end & beginning & ・・・
(最近の男は声かける度胸もないのかねぇ・・・暇だから相手くらいしてやるのに・・・)
ひと晩あけて翌日。ビーチで肌を焼いているユフィは、自分に声をかけようかどうしようか迷っている男どもの姿をサングラス越しに覗きながら、そんなことを考えていた。
ワンピースの水着ではあるが、彼女の見事なボディラインは隠せない。おまけにその美貌と、モンモンと放たれているフェロモン――正常な男なら、誰でも声をかけたくなる。
が、彼女の場合、それと同時に「ちょっと冷たい感じがする」だとか、「何となく声をかけずらい」だとか、あるいは「・・・騙されそう・・・」などと思わせてしまうタイプのようである。彼女が発している雰囲気は、(男女問わず)誰に対しても強気で人をケムに巻きそうな態度と性格がにじみ出ているのである(事実、そういう女だが)。決して男たちの軟弱さだけが理由ではない。
「ねぇ、マサキくん知らない?」
その証拠に、(あくまで)一見女らしいレイナが彼女に声をかけてくると、その瞬間、男たちは一斉に、レイナに声をかけてきた。
「・・・」
その光景に、ユフィは拳を握りながら体を振るわせている。
「ダ〜メ、私にはマサキくんといものがあるから」
レイナはいたずらっぽい笑顔で、そんなことをいって、やんわりと男たちの誘いを断った。
だが、男どもは、そんな彼女の言動にかえってかわいげを感じたのか、さらに彼女を口説くために必死になり始めた。
「・・・」
男たちが必死の思いで作った陽気でシャレた言葉が飛び交う中、レイナは横目でチラッとユフィのほうに視線を送った。その、一瞬だけ見せたそれは、かなりタチの悪いものであった。
どうやらユフィの心境に気づいているようだ。
っていうか、いたずらっぽい笑顔も、かわいげのある口調も、ユフィをからかうつもりであえて作ったようだ。・・・こいつもヤな女・・・
ブチッ・・・
キレた・・・
「・・・いい根性してんじゃない、あんた。あたしにケンカ売るなんて・・・
――っていうか、あんたらもあんたらよ! なんでおんなじような水着で、しかもよりナイスバデーなあたしに声をかけずに、この女にばっかいくのよ!!」
「それは、私のほうがかわいいし、ちょっと若いからじゃない?」
「よくいうわね! この年齢不詳女ぁ!!」
「・・・ここで力使ってもいいんだけど・・・?」
すでに男たちは退避した。
三白眼とイヤミな笑顔――熱いバトルがいま始まる・・・。
ビーチはもちろん、海までもが見渡せる丘の上。
その場にただひとつ、ひっそりと立つ墓石の側面を背もたれに、マサキは地面に腰を落としながら、プカプカとタバコをふかしていた。
墓石の正面のすぐ手前には、火のついたタバコの、フィルター部分のみが埋められいる。この墓の主も、生前はスモーカーだったようだ。
(・・・また来ちまったよ・・・)
マサキは一回ため息をついたうえで、そんな言葉を心の中でつぶやいた。
サングラス越しに蒼く澄み渡った大空を見上げるその目つきは、微笑を浮かべている際のそれとも、悲しげな表情を浮かべている際のそれともとれる、少しだけ複雑なものであった。
くわえタバコの先端から出ている煙が、そよ風に揺れていた。
See you later,from crazy guys
う・ち・あ・げ!
マサキ:フ〜、終わったな。
ユフィ:そうね・・・。って、あんた、自分が主役の作品が終わっちゃったわけだけど・・・?
マサキ:うん? まあ、もういいかな、と。
――? どうした、レイナ?
レイナ:・・・私、今回あんまり出番なかった・・・最終回だっていうのに・・・
一同:・・・
レイナ:ねぇ、私、ヒロインよね!? それなのに、なんで!?
マサキ:い、いや、オレにいわれても・・・
ユフィ:っていうかぁ〜、ヒロインは、あ・た・し(フフ〜ん)。
レイナ:・・・殺る気・・・?
ユフィ:上等・・・
クラウド&マサキ:・・・・
宝条:・・・おまえなど、まだいい。私なんか、セリフすらなかった・・・(滅)
ユフィ&レイナ:・・・
宝条:私は、私こそが重要人物ではないのかっ!? 博士だぞ!? フィガロ政府のマテリア悪用や、人体実験の生き証人なんだぞ!?
ユフィ:あんた、キャラ変わってるわよ?
レイナ:っていうか、ストーリーがこれ以上続かないんだから、そんなこと何の意味もないし・・・
宝条:・・・はぁうぅ!(号泣)
ユフィ:それはそうと、残念ねぇ〜。せっかく水着まで着たのに。
レイナ:ふたりともワンピースなのは、クラ鈴がワンピース派だかららしいよ。
マサキ:そういや、そんなこといってたなぁ。「たとえビキニが主流でも、オレは絶対ワンピース派!」とか・・・
ユフィ:ハイレグの角度がどれくらいかは、読者のみんなの想像に任せるわ〜。
クラウド:・・・どうでもいいが、少しは「あとがき」らしいこと話せ。
レイナ:そうそう。そういえば、この作品を終わらせるにあたって、クラ鈴は面倒くさくなって、当初、主要メンバー全員殺して終わらせるつもりだったらしいよ。
クエイク:なにぃぃっ!!
ユフィ:うわっ! あ、あんたなんでこんな所に!? っていうか、敵でしょ!?
クラウド:劇中、このサルと、「どっちが敵キャラなんだ?」ってやりとりしてたから、いいんじゃないのか?
マサキ:だから、人を「サル」「サル」いうなぁっ! っていうか、クエイク、てめぇもとっとと去ね!
クエイク:だまれ、サル・・・
マサキ:ぬ゛っ・・・てめぇまで・・・
クエイク:それよりも、だ! このオレまで殺してみろ! "全日本筋肉愛好会"のみなさんが黙ってないぞっ!!
マサキ:潰せ! そんな会!!
ユフィ:っていうか、あたしが潰しにいく。
レイナ:まあ、でも、書いてるうちにちょっと楽しくなって、こういう終わり方にしたみたいだけど。
マサキ:そりゃそうだな。クラ鈴は逆立ちしたって、トミノ監督にはなれねぇし。
レイナ:まあね。
――それはそうと、クラ鈴の頭の中にある「予定設定」だと、ティファ、ヴィンセント、バレット、マリン、リーヴは出すつもりでいたんだって。
マサキ:らしいな。ティファと初めて会ったオレが、「・・・でかっ!」ってつぶやくネタもあったらしいし。
ユフィ:クラ鈴・・・あんた、いつかティファのファンに刺されるわよ・・・
レイナ:ちなみに、バレットは「かつての勇敢さも消え失せて、いわば『守りに入って覇気を失った英雄』って、役柄だったんだって。んで、マリンちゃんは、10年の年月により結構かわいく、でも中身はしたたかに成長して、初恋の人(?)クラウドにちょっかい出す役回り。リーヴは第二章でちらっとだけど紹介したとおりで、ヴィンはどうしようか決めかねてたみたい。
マサキ:ナナキは出すか出さないかすら、決めてなかったらしいしな。
ユフィ:まあ、あいつはこの作品の作風考えるとねぇ・・・
レイナ:さらにいうと、青りんごではここで終わっちゃうけど、「続きを自サイトで・・・」とも考えてたみたいよ、クラ鈴は。まあ、サイト作ってる余裕なんてないから、それも実現不可能になっちゃったけど・・・
マサキ:とはいえ、クラ鈴自身も、この作品、飽きてたっぽいからなぁ〜。かなり忙しくなってきたし。
ユフィ:そうね。それに「どうせ書くなら完全オリジナル書きたい(ここに投稿する気はないので、ご安心を)」なんて考えてるみたいだし。
クラウド:そろそろ時間だぞ。
マサキ:おっ、もうそんな時間か?
ユフィ:そっか・・・それじゃ――じゃね。
レイナ:元気でね。
クラウド:・・・Good luck・・・。
マサキ:・・・最後までキザな奴・・・
マサキ:っていうかさぁ、「発表の場」が終わったんであって、オレたちの戦いや冒険はまだ続くんだろ?
ユフィ:そうね・・・別に完結した終わらせ方じゃなかったから・・・(滅)
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