プロローグ

 百年程前、アルフォリシア大陸の中央部に一匹の竜が出現した。
後に紅き瞳の竜≠ニ呼ばれるその竜は、いくつかの国と共に大陸を分断すると忽然と姿を消した。

 東西アルフォリシア大陸の誕生である。

 旧時代からの古王国が多い西アルフォリシアは分裂後もその体制のほとんどが維持され、四大王国と呼ばれる四つの大国を中心として多くの国々が栄えていた。
 それに対し、もともと地形的な問題から大国が生まれず、小国が乱立していた東アルフォリシアは、分裂に乗じた争乱もあってその疲弊は著しく、西アルフォリシアの支援なしでは独立さえも難しかった。
 それから数十年、東西アルフォリシア大陸には一定の均衡がもたらされていた。

 その均衡を破ったのは、大陸の遥か東方に位置するシュプリーム帝国の侵攻だった。

 一年ほど前、帝国は突如として東アルフォリシアに大軍を上陸させた。
 帝国の圧倒的な軍事力の前に東アルフォリシア諸国は次々と併合され、辛うじて抗戦を続ける数ヶ国を除いて大半が帝国の支配下におかれた。

 帝国の東アルフォリシア侵攻に脅威を感じた西の列強諸国は軍備を増強、来たるべき大陸間大戦への準備を着々と進めていた……

 

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