2 「ここだここだ」 公園通りを過ぎて港方向にしばらく歩いた所にギルドはあった。 一口にギルドと言っても冒険者ギルド、商工ギルド等様々あり、裏ギルドと呼ばれる盗賊(シーフ)ギルドや暗殺者(アサシン)ギルドの存在も確認されているが、一般にギルドと言えば冒険者ギルドのことを指す。 ギルドは冒険者に対する仕事の仲介や斡旋(あっせん)の他、魔物やお尋ね者に賞金を懸けて退治させる賞金首制度も行っており、その組織網(ネットワーク)は国家規模、大陸規模で拡がっている。 「話は聞いてるよ、ほら5万Gだ」 村から事前に連絡を受けていたのだろう、ギルドの主人は簡単な手続きを済ませるとすぐに賞金を出した。 「何か新しい仕事ない?」 満面の笑みを浮かべて紙幣(しへい)を数えるクニーRをよそにエリカが尋ねた。 「う〜ん、今のとこ大した仕事は入ってないな。軍が傭兵を募集してるけどあまり勧められんし……」 主人は帳簿をめくりながら顔を曇らせた。 「戦争が始まれば、最前線に送り込まれるのは傭兵隊だからな」 「戦争?」 エリカは小首をかしげた。 「なんだ、知らないのかい?帝国が西に攻めてくるって噂を……」 「え、帝国が?」 戦争という言葉にはさほど驚かなかったエリカだが、帝国という言葉には興味を示した。 「帝国の艦隊がフォーラルに集結してるらしいんだよ」 フォーラルとは東アルフォリシアの西端に位置する貿易都市である。ネプトリアが西の玄関と呼ばれるのに対し、フォーラルは東の玄関と呼ばれている。フォーラルは元々どこの国にも属さない都市国家だったが、帝国の東アルフォリシア併合に際して帝国に帰属し、現在は帝国の最前線拠点となっている。 「そうなんだ」 「おい、行くぞ!今夜は宴会だ」 いつの間にか入口に向かっていたクニーRがエリカを促した。 「まったく、この男は……」 エリカはギルドの主人に礼を言ってクニーRの後を追った。 |